タイアップとは?メリットやリスク、成功事例を紹介



近年、一般的なマーケティング戦略では商品やサービスが売れにくくなっているケースもあり、多くの企業では他社商品との差別化、新規市場の開拓など、新たなアプローチが求められています。

その手段の1つとして、キャラクターやインフルエンサーなどとのタイアップが注目されています。

そこで本記事では、タイアップの概要、タイアップのメリットやデメリット、成功事例などを紹介します。



タイアップとは?

タイアップは、企業が売上増加やブランド認知度向上を目指すために行う戦略的なマーケティング手法です。複数の企業や団体が協力し、それぞれの強みを活かしながら、新たな価値を創造する取り組みとして注目されています。

特に、既存市場が飽和している現代のビジネス環境において、タイアップは新たな顧客層へのアプローチ手段として重要性を増しています。例えば、アニメキャラクターと日用品メーカーのタイアップでは、従来の商品顧客層とは異なるアニメファン層への訴求が可能となり、新しい市場の拡大につながります。

また、競合他社との差別化を図る上でも、タイアップは効果的な戦略です。組み合わせによる独自性のある商品開発や、話題性の高いプロモーション展開により、市場での存在感を高めることができます。特に、SNSを活用したタイアップでは、情報拡散効果も期待できます。


タイアップとコラボレーションの違い

タイアップとコラボレーションは、企業間の協力関係を表す言葉として頻繁に使用されますが、その本質的な違いを理解している人は意外と少ないのが現状です。

タイアップの特徴は、一社が主導的な立場となり、他の企業が協力する形態です。例えば、アニメ制作会社が持つキャラクターIP(知的財産)を、食品メーカーが商品パッケージに使用する場合、食品メーカーが主導となってマーケティング活動を展開します。この場合、主にプロモーション効果を目的としており、短期的な売上向上や認知度アップを狙うケースが多くなっています。

一方、コラボレーションは、複数の企業が対等な立場で協力しあい、新しい価値を創造することを目指します。例えば、アパレルブランドとスポーツメーカーが共同で新しいウェアラインを開発する場合、両社の技術やデザイン力を融合させて、これまでにない商品を生み出すことが目的となります。

両者は目的に応じた使い分けも重要です。広告効果や短期的な売上向上といった利益追求の場合はタイアップが適しており、対等な関係による新商品開発や長期的なブランド価値向上を目指す場合はコラボレーションが効果的と言えます。


タイアップの種類

タイアップの種類は、企業の目的や対象となる顧客層によって多岐にわたります。効果的なタイアップを実現するためには、それぞれの特徴を理解し、最適な形態を選択することが重要です。

ここでは、主なタイアップとして以下について説明します。

  • 商品タイアップ
  • 広告タイアップ
  • イベントタイアップ

これらのタイアップ形態を理解し、自社の目的に合った最適な形態を選択することが重要です。様々なタイアップの可能性を探り、新たなビジネスチャンスを見出すことがポイントになるでしょう。


商品タイアップ

商品タイアップは、特定のブランドやキャラクター、メディアと連携して新商品を開発・販売する、または既存商品に新たな価値を付加する戦略的なマーケティング手法です。

例えば、食品メーカーが人気アニメのキャラクターとタイアップして限定パッケージ商品を展開したり、高級ファッションブランドと日用品メーカーが協力して新商品を開発したりするケースが挙げられます。このような取り組みにより、既存商品に新たな付加価値を与え、競合との差別化を図ることができます。

商品タイアップの大きな利点は、新たな顧客層へのアプローチが可能になることです。例えば、若者向けキャラクターとのタイアップにより、従来の顧客層とは異なる若年層への訴求が可能になります。また、高級ブランドとのタイアップでは、商品のプレミアム性を高め、新たな富裕層市場の開拓につながる可能性を秘めています。

広告タイアップ

広告タイアップは、外部の企業やメディアやインフルエンサーなどと連携して行う戦略的なマーケティング手法です。特定の製品やサービスを効果的に宣伝するため、それぞれの媒体の強みを活かした相乗効果を生み出すことを目指しています。

例えば、人気キャラクターやタレントを起用した広告展開では、そのキャラクターやタレントがもつファン層に対して強い訴求力を持つことができます。特に、若年層をターゲットとする場合、SNSなどで話題のアニメキャラクターやインフルエンサーとのタイアップが効果的です。

また、メディアとのタイアップでは、そのメディアが持つ信頼性や影響力を活用できます。例えば、専門誌とのタイアップ記事は、その分野に関心の高い読者層に対して詳細な情報を提供することが可能です。これにより、単なる広告以上の説得力を持った情報発信が可能となります。

デジタル領域での広告タイアップも増加しています。SNSやウェブメディアとのタイアップでは、ターゲット層の利用頻度が高いプラットフォームで情報を発信することで、効率的なリーチが可能です。さらに、デジタル広告ならではの詳細な数値による効果測定や、ユーザーの反応に基づいた改善も行いやすいという利点があります。

イベントタイアップ

イベントタイアップは、複数の企業やブランドが協力してイベントを開催したり、協賛することを指します。相乗効果を生み出す効果的なマーケティング手法です。特定のイベントやキャンペーンに複数の企業が参加することで、より大きな集客効果と話題性を創出することが可能です。

例えば、大規模な展示会やフェスティバルでは、人気キャラクターとのタイアップによる限定グッズの販売や、体験型アトラクションの提供など、来場者の興味を引く様々な企画が実施されます。このようなアプローチにより、単独での開催よりも多様な層の集客が可能となり、各参加企業のブランド価値向上にもつながります。

また、季節やトレンドに合わせたイベントタイアップも効果的です。例えば、夏祭りや冬のイルミネーションイベントと、地域企業や人気キャラクターとのタイアップにより、地域活性化と企業のブランディングを同時に実現できるでしょう。

デジタル技術を活用したイベントタイアップも増加しています。ARやXR、VRを使用した体験型コンテンツの提供や、SNSと連動したキャンペーンの実施など、オンラインとオフラインを融合させた新しい形のイベント展開が可能になっています。


タイアップの主な目的

企業のビジネス戦略において、タイアップは「重要な複数の目標を達成する」ために、欠かせない戦略と言えるでしょう。

そして、タイアップの目的として主に以下のことが挙げられます。

  • ブランド認知度の向上
  • 新市場の開拓
  • コスト効率の改善
  • ブランド価値の向上と差別化

企業としては、これらの目的を理解し、自社の戦略に合わせた最適なタイアップパートナーを見つけることが重要です。そのために、自社のタイアップ目的を明確にしておく必要があるでしょう。


ブランド認知度の向上

ブランド認知度の向上は、企業タイアップの主要な目的の一つです。通常の広告手法とは異なり、タイアップを通じて既存顧客とは異なる層にブランドを効果的に露出させることができます。

特に、信頼性の高いメディアとのタイアップは、ブランドの信頼性向上に大きく貢献します。例えば、業界誌や専門メディアとのタイアップでは、その分野に関心の高い読者層に対して、より説得力のある形で商品やサービスの価値を伝えることが可能です。

また、ターゲット層に特化したタイアップ展開も効果的です。若年層向けのSNSインフルエンサーとのタイアップや、ビジネスパーソン向けの経済メディアとのタイアップなど、それぞれの層に最適なチャネルを選択することで、ブランドメッセージを効率的に届けることができるでしょう。

デジタル技術の進化により、タイアップを通じたブランド認知度向上の手法も多様化しています。ARやVRを活用した体験型コンテンツや、NFTを活用したデジタルコレクタブルなど、従来にない形でブランドの魅力を伝えることが可能になっています。

新市場の開拓

新市場の開拓は、タイアップを通じて実現できる重要な戦略目標の一つです。特に、人気アニメや映画とのタイアップを通じて、これまでリーチできなかった顧客層へのアプローチが可能となります。

例えば、伝統的な和菓子メーカーが人気アニメとタイアップすることで、若年層の新規顧客を獲得できます。アニメのファン層に向けて限定商品を展開することで、従来の顧客層とは異なる市場を開拓できるでしょう。また、アニメファンの強い購買意欲と情報発信力を活用することで、SNSでの話題化も期待できます。

一方、若者向けブランドが老舗企業とタイアップすることで、より幅広い年齢層への訴求も可能です。例えば、カジュアルウェアブランドが伝統工芸とコラボレーションすることで、従来の若年層に加えて、品質や伝統を重視する年配層にもアプローチできます。

コスト効率の改善

コスト効率の改善は、タイアップを通じて実現できる重要なメリットの一つです。複数の企業が協力することで、単独では難しい効率的な事業運営が可能になります。

まず、広告費用の分担による効率化が挙げられます。複数企業で広告費を分担することで、個々の企業の負担を軽減しつつ、より大規模なプロモーションが実現可能です。例えば、テレビCMやWeb広告など、通常は高額な広告媒体も、費用を分担することで実施が可能になります。

また、人材や技術などのリソース共有も重要な効率化要因です。それぞれの企業が持つ専門知識や技術力を相互に活用することで、新規採用や技術開発にかかるコストを抑制できます。特に、デジタル技術の活用やマーケティングノウハウの共有は、業務効率の向上に大きく貢献します。

さらに、共同プロモーションによる相乗効果も見逃せません。複数企業が協力してキャンペーンを展開することで、より広範な顧客層へのアプローチが可能になり、投資対効果を最大化できます。SNSでの情報拡散効果も期待できるでしょう。

ブランド価値の向上と差別化

ブランド価値の向上と差別化は、タイアップを通じて実現できる重要な戦略目標です。特に、キャラクターやブランドとのタイアップを通じて、独自性のあるブランドイメージを構築し、市場での競争優位性を確立することができます。

例えば、高級ブランドとのタイアップでは、そのブランドが持つ洗練されたイメージや信頼性を自社製品に反映させることが可能です。これにより、競合他社との差別化を図り、プレミアム市場での地位を確立できます。

また、人気キャラクターとのタイアップは、そのキャラクターが持つ世界観や価値観を自社ブランドに取り入れることで、より魅力的で記憶に残るブランドイメージを創造できます。特に、若年層をターゲットとする場合、アニメやゲームのキャラクターとのタイアップは効果的です。

消費者との関係構築においても、タイアップは重要な役割を果たします。例えば、SNSを活用したタイアップキャンペーンでは、ファンとの双方向コミュニケーションを通じて、より深いエンゲージメントを実現できます。限定商品や特別イベントの開催により、ファンの期待に応える特別な体験を提供することも可能です。


ライセンスビジネスとは

ライセンスビジネスは、知的財産権を戦略的に活用して収益を生み出す現代のビジネスモデルです。キャラクター、ブランド、技術などの知的財産を他社に使用許諾することで、ロイヤリティという形で収入を得ることができます。

このビジネスモデルの特徴は、権利を保有するライセンサーと、使用を許諾されるライセンシーという二つの立場が、互いの強みを活かして市場価値を高めていく点です。例えば、人気アニメのキャラクター権利を持つライセンサーと、優れた製造技術を持つライセンシーが協力することで、高品質な商品を効率的に市場に展開できます。

また、ライセンスビジネスは、自社のリソースだけでは実現が困難な市場展開を可能にします。例えば、海外展開を考えるライセンサーが、現地の有力ライセンシーにライセンスを供与することで、そのライセンシーが保有する販売網や市場知識を活用した効率的な展開ができるでしょう。


ライセンスビジネスの種類と特徴

ライセンスビジネスの種類と特徴は、市場のニーズや技術の進化に応じて多様化しています。それぞれの分野で独自の価値を持ち、様々なビジネス機会を提供しています。

ここでは主なライセンスビジネスとして、以下のものを取り上げます。

  • 商標ライセンス
  • キャラクターライセンス
  • 技術ライセンス
  • デジタルライセンス

これらのライセンスビジネスの特徴を理解することで、自社の強みを活かせる最適なライセンス形態を見出し、新たなビジネス機会を創出できるでしょう。


商標ライセンス

商標ライセンスは、企業のブランド名やロゴマークの使用権を他社に許諾することで、双方の価値向上を図るビジネスモデルです。商標権者(ライセンサー)と使用権取得者(ライセンシー)が、それぞれの強みを活かしながら、市場での競争力を高めることができます。

このライセンス形態の特徴は、地域や市場に応じた柔軟な展開が可能な点です。例えば、特定の地域での商標使用権を現地企業に付与することで、その企業が持つ市場知識や販売網を活用した効率的な展開ができます。これにより、グローバル展開における経験や知識不足からくるリスクを軽減しつつ、各地域に適した商品開発やマーケティングが可能になるでしょう。

一方で、ブランド価値の保護は商標ライセンスにおいて最も重要な課題の一つです。ライセンシーの商品品質や使用方法を適切に管理することで、ブランドの一貫性と信頼性を維持する必要があります。そのため、詳細な品質基準の設定や定期的な監査など、綿密な管理体制の構築が不可欠です。

キャラクターライセンス

キャラクターライセンスは、アニメ、マンガ、ゲームなどの人気コンテンツに登場するキャラクターの使用権を許諾するビジネスモデルです。

このライセンス形態の特徴は、キャラクターの持つ高い訴求力を活用して、商品やサービスの価値を高められる点です。例えば、人気アニメのキャラクターを商品パッケージに使用することで、ファン層からの支持を獲得し、売上増加につながります。

特に注目すべきは、期間限定商品や特別デザインの展開による希少価値の創出です。限定性を持たせることで、商品自体のコレクション価値が高まり、通常商品以上の価値創出が可能になります。また、SNSでの話題性も高まり、自然な形での情報拡散も期待できるでしょう。

技術ライセンス

技術ライセンスは、企業が保有する特許技術や製造ノウハウを他社に許諾することで、技術革新と市場拡大を促進するビジネスモデルです。特に製造業において、研究開発コストの削減や技術革新の促進に貢献しています。

このライセンス形態の特徴は、複数企業間での技術の相互利用が可能な点です。例えば、クロスライセンス契約を通じて、企業同士が互いの特許技術を許諾し合うことで、より効率的な製品開発が可能になります。特に、デジタルヘルスケアやAI技術の分野では、このような技術の相互利用が活発化しています。

また、他社の技術を活用することで、自社での開発コストを大幅に削減できる点もメリットです。例えば、新規参入企業が既存企業の技術をライセンス導入することで、市場参入までの時間とコストを抑えることが可能になります。その結果、より多くの企業が市場に参入でき、業界全体の技術革新が促進されるでしょう。

近年では、技術ライセンスの形態も多様化しています。従来の製造技術に加えて、AIモデルやデータセット、ソフトウェアアルゴリズムなど、デジタル技術に関するライセンスも増加しています。特に、機械学習モデルのライセンスは、新たな市場として注目を集めています。

デジタルライセンス

デジタルライセンスは、急速に進化するデジタル技術とコンテンツ市場に対応した新しいライセンスビジネスの形態です。わかりやすくいうと、「デジタルコンテンツの使用を許可する権利を定めた契約」といったものです。動画や音楽のストリーミング配信権の管理から、AIモデルの使用許諾まで、幅広い領域をカバーしています。

ストリーミング配信権の管理は、デジタルライセンスの中核を担う重要な要素です。音楽や動画コンテンツのデジタル配信が主流となる中、適切なライセンス管理と収益化が不可欠となっています。例えば、複数のプラットフォームでのマルチユース展開や、地域ごとの配信権管理など、きめ細かな戦略が求められるでしょう。

AIテクノロジーの活用により、複雑化するライセンス契約の管理が効率化されています。機械学習を用いた契約書の自動解析や、利用状況のリアルタイムモニタリング、ロイヤリティ計算の自動化など、デジタル技術を活用した管理システムの導入が進んでいます。

SNSやアプリケーションなど、新しいデジタルプラットフォームでのライセンスビジネスも急速に拡大中です。特に、NFTやメタバースなどの新興デジタル市場では、従来にない形態のライセンスビジネスが生まれています。今後もデジタル社会の発展とともに、新たな収益機会が創出されています。


タイアップのリスクやデメリット

タイアップには、ブランド価値向上や市場拡大などのメリットがある一方で、いくつかの重要なリスクやデメリットも存在します。これらを十分に理解し、適切に対処することが、成功的なタイアップの実現につながります。

タイアップの主なデメリットとしては、以下が挙げられます。

  • 契約交渉と調整の複雑さ
  • コストの高さ
  • ブランドイメージへのリスク
  • 時間と労力の負担

これらのリスクやデメリットを十分に理解し、適切な対策を講じることで、タイアップの成功確率を高めることができます。

タイアップを検討する際は、自社の目標や状況に照らし合わせて、そのメリットとデメリットを慎重に比較検討することが賢明です。


契約交渉と調整の複雑さ

契約交渉と調整の複雑さは、タイアップを実施する際の重要な課題の一つです。特に、異なる業種間でのタイアップでは、契約や権利関係の調整に多くの時間と労力が必要となる場合があります。

まず、契約形態の選択から慎重な検討が必要です。日本では従来、意思主義に基づく契約が一般的でしたが、近年は米国式の形式主義に基づく完全合意条項を含む契約も増加しています。このため、契約書の作成には法務部門や専門家との綿密な協議が不可欠です。

また、異なる業種間では商習慣の違いが大きな課題となります。例えば、支払い条件や品質管理基準、納期の考え方など、業界ごとに異なる慣行が存在します。これらの違いを調整し、双方が納得できる合意を形成するには、時間をかけた協議が必要です。

さらに、各社の利益を考慮した詳細な条件のすり合わせも重要です。特に、ロイヤリティの設定やミニマムギャランティの有無、独占権の範囲など、収益に直結する条件については慎重な協議が求められます。場合によっては、契約違反時の損害賠償、不可抗力条項、紛争解決方法など、リスク管理に関する条項も盛り込む必要があります。複数回の交渉を経て最終的な合意に至ることも珍しくありません。

コストの高さ

タイアップのコストの高さは、企業が直面する重要な課題の一つです。特に大手メディアとのタイアップでは、基本的な掲載費用に加えて、様々な追加コストが発生する可能性があります。

特に、キャラクターやタレントを起用する場合は、追加のライセンス料が必要となります。人気キャラクターの場合、使用料は数百万円単位など高額になることも珍しくありません。また、クリエイティブ制作やデザイン費用、撮影費用なども別途必要となり、総額が大きく膨らむ可能性があります。

デジタル領域でのタイアップでは、Web制作費やシステム開発費なども考慮する必要があります。特に、ARやVRなどの先進的な技術を活用する場合、開発コストが高額になることもあるでしょう。

このような高コストに対して、費用対効果を慎重に見極めることが極めて重要です。タイアップによる売上増加や認知度向上が、投資額に見合わない場合、企業の利益を圧迫する恐れがあります。そのため、事前に詳細な費用対効果の試算と、リスク管理計画の策定が不可欠です。

ブランドイメージへのリスク

ブランドイメージへのリスクは、タイアップを実施する際に最も慎重に考慮すべき要素の一つです。特に、長年かけて構築してきたブランド価値が、タイアップによって損なわれる可能性があることを認識しておく必要があります。

タイアップ先の不祥事やスキャンダルは、自社ブランドに深刻な影響を及ぼす可能性があります。例えば、タイアップ先のタレントや企業が不適切な行為や発言で批判を受けた場合、その悪影響は自社にも波及します。特にSNSの発達により、情報の拡散スピードが速く、一度炎上すると収束までに多大な時間と労力が必要となるでしょう。

また、タイアップ広告がステルスマーケティングと誤解されるリスクも重要です。2023年10月より、ステルスマーケティングは景品表示法違反として規制対象となっており、違反した場合は企業名の公表や罰則の対象となります。そのため、タイアップであることを明確に表示し、消費者の信頼を損なわないよう細心の注意を払う必要があります。

さらに、タイアップ先とのブランドイメージの不一致も大きな課題です。例えば、高級ブランドと大衆向け商品のタイアップは、双方のブランドイメージを損なう可能性があります。消費者に混乱を招くだけでなく、既存顧客の離反にもつながりかねません。リスクも十分に考慮し、慎重な判断を行うことが求められます。

参考:消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」

時間と労力の負担

時間と労力の負担は、タイアップを実施する際の重要な検討事項です。企画立案から実施まで、多くのプロセスと調整が必要となるため、十分な準備期間と人的リソースの確保が不可欠になります。

まず、企画段階では目的設定、ターゲット分析、パートナー選定など、綿密な準備が必要です。特に、タイアップ先との契約交渉や権利関係の調整には、予想以上の時間がかかることがあります。例えば、キャラクターライセンスの場合、使用範囲や期間、ロイヤリティなどの条件交渉に数ヶ月を要することも珍しくありません。

また、実施段階では各関係者との細かな調整や確認作業が必須となります。クリエイティブの制作、プロモーション計画の立案、スケジュール管理など、多岐にわたる業務をこなす必要があります。特に、複数の企業や部門が関わる場合は、意思決定プロセスが複雑化し、予定以上の時間を要することがあります。

さらに、タイアップの成功には長期的なコミットメントが必要です。短期的な成果を求めるのではなく、継続的な関係構築とブランド価値の向上を目指す必要があります。そのため、プロジェクト管理やリソース配分の面で、長期的な視点での計画が求められるでしょう。


タイアップの成功事例

タイアップの成功事例は、企業間の効果的な協業によって新たな価値を創造し、市場での大きな反響を得た取り組みとして注目されています。

ここでは、有名企業やキャラクターとのタイアップ事例を紹介します。

  • 日清食品と「鬼滅の刃」のタイアップ
  • シック・ジャパンと「エヴァンゲリオン」のタイアップ
  • ユニクロと「MARNI(マルニ)」のタイアップ

これらの事例から、成功のポイントとして、ターゲット層の明確な設定、独創的な企画立案、デジタル技術の効果的な活用、そして両社のブランド価値を損なわない適切な協業体制の構築が重要であることがわかるでしょう。


日清食品×鬼滅の刃

日清食品と「鬼滅の刃」のタイアップは、大手食品メーカーとアニメIPの効果的な協業事例として注目を集めています。

このタイアップの特徴は、前年の成功を踏まえた再展開であり、より"ド派手"なデザインで差別化を図った点です。

「どん兵衛」と「U.F.O.」という主力商品のパッケージに、アニメ制作スタジオ「ufotable」による描き下ろしイラストを採用しました。特に「遊郭編」に登場する炭治郎、天元、堕姫という人気キャラクターを起用し、ファンの心をつかむ工夫が施されています。

また、商品展開においても戦略的なアプローチが見られます。「どん兵衛」シリーズでは東日本・西日本の地域特性に合わせた商品展開を行い、「U.F.O.」は全国統一展開とするなど、きめ細かなマーケティング戦略を実施しています。

参考:日清食品「「鬼滅の刃」限定パッケージ3品 (10月3日発売)」

シック・ジャパン×エヴァンゲリオン

シック・ジャパンとエヴァンゲリオンのタイアップは、カミソリ製品と人気アニメIPの独創的な組み合わせにより、大きな成功を収めた事例として注目されています。2021年に展開された「EVA × Schick 2020」シリーズでは、アニメキャラクターのプラグスーツをモチーフにしたカミソリを発売し、ファンから高い評価を得ました。

特筆すべきは、製品デザインへのこだわりです。綾波レイ、式波・アスカ・ラングレー、真希波・マリ・イラストリアスの3キャラクターが着用するプラグスーツのカラーリングを、カミソリのホルダーから替刃に至るまで細部まで忠実に再現しました。この企画は1年半以上の開発期間を経て実現し、シック史上初の試みとなりました。

また、このタイアップでは製品だけでなく、パッケージやオリジナル缶ケースにも作品世界観を反映しています。缶ケースの裏面には劇中に登場する組織「NERV」のロゴを配置するなど、ファンの収集意欲を刺激する細かな工夫が施されています。

さらに、商品購入者を対象としたキャンペーンも実施し、オリジナルデザインのバスタオルが当たる企画を展開しました。これにより、商品の購買意欲を高めるだけでなく、ファンの期待に応える特典を用意することで、ブランドへの好感度向上にも成功しています。

参考:シック・ジャパン株式会社「Schick史上初・エヴァ プラグスーツコラボモデルカミソリをSchick公式ストア、EVANGELION STORE(オンライン)、Amazonにて限定発売。先行予約も本日開始!」

ユニクロ×Marni

ユニクロとMARNI(マルニ)のタイアップは、カジュアルウェアブランドとラグジュアリーブランドの革新的な協業として、ファッション業界で大きな注目を集めました。2022年5月に展開された「UNIQLO and MARNI」コレクションは、「斬新でありながら誰もが日々楽しめる」をコンセプトに、両ブランドの強みを融合させた新しい価値を創造しています。

このタイアップの特徴は、ユニクロの高品質な製造技術とMARNIの独創的なデザイン性の調和にあります。特にカラーリングとプリントデザインでは、MARNIの代名詞である大胆な色使いと温かみのあるグラフィックを、ユニクロの定番アイテムに効果的に取り入れることに成功しました。

商品展開においても、世代やジェンダーを超えた幅広い層への訴求を実現しています。ウィメンズ9アイテム、メンズ10アイテム、グッズ1アイテムという豊富なラインナップで、バルーンスカートやテーラードジャケットなど、両ブランドの特徴を活かした商品構成となっています。

さらに、デジタル施策としてInstagramのARフィルターを公開し、コレクションの世界観をソーシャルメディアでも展開しました。オンラインとオフラインを融合させた効果的なプロモーション戦略により、若い世代からの支持も獲得しています。

参考:ユニクロ「遊び心を詰め込んだ、“タイムレスでアートな日常着”初のコラボレーション「UNIQLO and MARNI」」


これからのタイアップの在り方

これからのタイアップの在り方は、「短期的な成果」や「一時的なブーム」を目的とするのではなく、より戦略的かつ持続可能なアプローチが求められています。

まず重要なのは、タイアップパートナーの選定基準を見直すことです。単に知名度や人気の高さだけでなく、自社のブランド価値や理念との親和性、ターゲット層との適合性など、多角的な視点での評価が必要です。

例えば、SDGsへの取り組みを重視する企業であれば、環境保護活動に積極的なパートナーとのタイアップが、より説得力のあるメッセージを発信できるでしょう。

また、デジタル技術の進化に伴い、タイアップの形態も多様化しています。ARやVRを活用した体験型コンテンツ、SNSを活用したインタラクティブなキャンペーン、NFTを活用したデジタルコレクタブルの展開など、新しい技術を活用した革新的なアプローチが可能になっています。

さらに、グローバル市場を視野に入れたタイアップ戦略も重要です。日本のキャラクターやコンテンツは海外でも高い評価を受けており、これらを活用した国際展開の可能性が広がっています。ただし、文化的な違いや現地の規制なども考慮に入れた慎重な展開が必要となるでしょう。


▶監修:小山幹人氏

【プロフィール】
株式会社Minto CM本部 L&M部

吉本興業株式会社にて、モバイルコンテンツやネット配信といったデジタルコンテンツ制作に従事。その他、アーティストマネジメントやオウンドメディアの企画制作を経て、現在は株式会社Mintoにて自社IPをメインとしたライセンス部門を担当。


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