クリエイターエコノミーとは?ビジネスモデルや活用事例を紹介



近年、「クリエイターエコノミー」と呼ばれる新しい経済圏が急速に拡大しています。クリエイターエコノミーは個人がインターネット上で自らのコンテンツやオリジナル商品を発信し、収益を得る仕組みのことです。YouTubeやInstagramなどSNSの発展やコロナ禍による自宅で過ごす時間の増加などをきっかけに大きく発展しました。

本記事では、クリエイターエコノミーの意味や歴史、注目されている背景から、ビジネスへの活用方法や事例まで詳しく解説します。



クリエイターエコノミーとは

「クリエイターエコノミー」とは、個人のクリエイターがインターネット上でコンテンツやオリジナル商品を制作・発信し、収入を得ることによって形成される経済圏です。クリエイターは、YouTube、Instagram、TikTokなどのSNSを利用し、広告収入やグッズ販売、投げ銭、サブスクリプションなど、さまざまな収益モデルによって収入を得ることができます。

個人が自身の創造力を活かして収入を得る機会が広がったことで、多くの人に注目されています。


クリエイターエコノミーの歴史

クリエイターエコノミーの歴史は、1999年に開始されたブログサービス「Blogger」から始まります。Bloggerによって誰もが手軽にブログを始め、情報発信ができるようになりました。その後、2005年には動画配信サービス「YouTube」、2010年には写真共有アプリ「Instagram」が登場し、個人がメディアを通じて情報を発信できる場が大きく広がりました。

2008年にはYouTubeで広告サービスが始まり、コンテンツクリエイターに利益が還元される仕組みが整い、収益化が可能になります。さらに2010年以降、「インスタグラマー」などSNS上で商品を宣伝するインフルエンサーが登場し、インフルエンサーマーケティングが本格化しました。

15年程度が経過した2024年時点においても、インフルエンサーマーケティングは企業が商品やサービスの知名度や売上を向上させる手法として活用されています。

一般社団法人クリエイターエコノミー協会の役割

一般社団法人クリエイターエコノミー協会が2021年に設立されました。ミッションは、クリエイターが自由かつ安全に活動できる社会環境を整え、その活動を促進することです。また、クリエイターの保護や活躍を後押しするための政策提言も行っており、日本におけるクリエイターエコノミーの普及に貢献しています。

クリエイターは、しばしば金銭や著作権に関するトラブルに巻き込まれるリスクがあります。こうした状況を受けて、国は「フリーランス・トラブル110番」を開設するなどの対策を講じていますが、クリエイターが抱える課題は依然として多く、金銭トラブルや著作権に関する問題は頻繁に発生しています。

特に、フリーランスとして活動するクリエイターは法的なサポートが十分でないことも多く、自己防衛策が求められる場面が少なくありません。そこで、一般社団法人クリエイターエコノミー協会は、こうした問題に対応するためのガイドライン作成や相談窓口の設置を行い、クリエイターが安心して活動できる環境作りに努めています。

参考:一般社団法人クリエイターエコノミー協会


クリエイターエコノミーが注目される背景

個人がインターネット上でクリエイターとして収益を得やすくなったことから、クリエイターエコノミーは急速に拡大しています。近年では、企業からの制作案件の受注やコラボ商品開発といった形で、企業と個人の連携も進んでいます。クリエイターエコノミーの成長には、以下の背景があります。


デジタルプラットフォームの拡大と収益化手段の多様化

YouTubeやInstagram、SHOWROOMなどのプラットフォームが登場し、クリエイターが収益を得られる環境が整いました。たとえば、動画の再生回数に応じて広告収入を得たり、ファンからの支援で収益を上げたりできます。また、InstagramやSHOWROOMには、ライブ配信中に商品を紹介し、視聴者がその場で購入できるライブコマースの機能もあり、商品販売で直接収益を上げることも可能です。

さらに、サブスクリプションサービスを通じて、クリエイターはファンから定期的な支援を受けることもできます。このように、個人がコンテンツの「生産者」や「販売者」として、インターネット上で経済活動を行う機会が増加しました。

コロナ禍によるデジタルコンテンツ需要の増加

コロナ禍による外出制限やリモートワークの普及で、自宅で過ごす時間が大幅に増えました。その影響で、オンラインショッピングやオンライン学習などのデジタルコンテンツの需要が急増し、人々がインターネットを通じて情報や娯楽を求める傾向が高まりました。

また、YouTubeやInstagram、SHOWROOMといった動画やライブ配信が可能なプラットフォームの利用者も増え、クリエイターが自らのコンテンツを収益化しやすくなったことも背景の1つです。

参考:内閣府「第5回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」


クリエイターエコノミーの市場規模

一般社団法人クリエイターエコノミー協会と三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査によれば、2021年の国内クリエイターエコノミー市場規模は1兆3,574億円に達しました。この数値は、世界市場規模の約9%に相当します。さらに、今後の成長が期待される中、2034年には国内の市場規模は10兆円を超えると予測されています。

このように、クリエイターエコノミーは急速に拡大している分野であり、将来的な発展が見込まれています。
参考:一般社団法人クリエイターエコノミー協会「日本初!国内クリエイターエコノミー調査結果を発表


クリエイターエコノミーのビジネスへの活用方法

近年、クリエイターエコノミーを多くの企業がビジネス戦略に取り入れています。クリエイターたちは独自の視点やスキルを持ち、多様なコンテンツを制作する能力があります。そのため、企業がクリエイターと協力することで、より効果的で魅力的なマーケティング活動を展開することが可能です。

クリエイターエコノミーのビジネスへの活用方法について詳しく見ていきましょう。


クリエイターによるコンテンツ制作代行

企業は、クリエイターに商品紹介動画や広告の制作を依頼することで、プロフェッショナルなコンテンツの配信が可能になります。

たとえば、企業が自社商品の説明動画をYouTubeで配信したいと考えた場合、YouTubeの視聴者層やプラットフォームの特性を理解したクリエイターに依頼することで、魅力的で質の高い映像を配信できます。

インフルエンサーを通じた商品プロモーション

インフルエンサーを通じた商品プロモーションは、紹介してほしい商品やサービスと親和性が高いインフルエンサーに自社製品のプロモーションを依頼する手法です。

たとえば、化粧品ブランドの場合は美容系インフルエンサーに商品レビューを依頼します。

インフルエンサーによる商品プロモーションは、フォロワーにとってはWebサイトや動画配信サイトで表示される広告よりも信頼性が高いため、より高い効果が期待できます。

クリエイターとのコラボレーション商品開発

人気クリエイターとのコラボレーション商品の開発には、下記3つのメリットがあります。

  • ブランドの認知度が高まる
  • クリエイターのファン層を取り込むことができる
  • 話題性があればメディア露出によってさらに多くの見込み客にアプローチできる

たとえば、ファッションブランドが有名クリエイターと共同で限定商品を制作し、販売するケースがあります。クリエイターの独自のセンスやスタイルが反映された商品は、ファンにとって特別なため、より高い効果が期待できます。

オンラインイベントやウェビナーでのクリエイター活用

企業は、オンラインイベントやウェビナーにクリエイターをゲストとして招くことで、参加者数を増やすことができます。

たとえば、テクノロジー企業が著名なゲーム配信者を招いて新製品の発表会を行う場合、配信者のファンがイベントに参加し、新製品の知名度が高まります。

ゲーム配信者が自身のプラットフォームでイベントを告知すれば、さらに多くの視聴者を集めることが可能です。


旧来のインフルエンサーマーケティングからは大きく変化している

現代のクリエイターエコノミーには、従来のインフルエンサーマーケティングとは異なる特徴があります。

まずは、クリエイターの独自性を尊重する点です。クリエイターエコノミーは、企業が自社のブランドイメージを一方的に押し付けるのではなく、クリエイターの個性や表現方法を最大限に尊重します。これにより、クリエイターのファンもブランドを自然に受け入れやすくなり、プロモーション効果が高まります。

また、双方向的な関係の構築も、クリエイターエコノミーの特徴です。企業はクリエイターの意見やニーズを取り入れることで、双方にとってメリットのある関係を実現します。深い信頼関係を築くことで、クリエイターがブランドに真剣に向き合い、影響力を持続させる基盤となります。

さらにクリエイターと企業の関係性や、広告であることを明確に示すことによる透明性はユーザーからの信頼性を担保します。これらの特徴は、クリエイターエコノミーの発展を支える重要なポイントになります。


クリエイターエコノミーの収益化手法

クリエイターエコノミーでは、下記の収益化手法があります。

  • 動画ライブ配信
  • 音声コンテンツ
  • イラストや写真の製作
  • クラウドファンディング

それぞれの収益化の仕組みについて、詳しく見ていきましょう。


動画ライブ配信

動画ライブ配信は、視聴者とリアルタイムで双方向のコミュニケーションを取ることができる形式です。配信者がライブ配信中に行うパフォーマンスやトークに対して、視聴者は「投げ銭」や「ギフト」を送ることで支援します。

たとえば、SHOWROOMというプラットフォームでは、視聴者が配信者に有料ギフトを贈れます。

また、YouTubeでもライブ配信中に「スーパーチャット」や「スーパーステッカー」を通じて、視聴者が配信者を支援できます。配信者はリアルタイムで視聴者からの反応を受け取りつつ、収益を得ることが可能です。

さらに、TikTokでは「ギフト」機能を利用してフォロワーから仮想通貨を受け取ることもできます。

音声コンテンツ

音声配信プラットフォームは、音声コンテンツを配信することでリスナーから収益を得る形式です。

収益化の方法には、広告収入、月額課金、リスナーからの寄付や支援(差し入れ)などがあります。たとえば、Voicyでは月額課金制の「プレミアムリスナー」制度があることに加え、クリエイターへの差し入れができます。

また、Spotifyでは自身のポッドキャスト内に広告を挿入し、リスナーがその広告を閲覧することで収益を得られます。

イラストや写真の製作

イラストや写真を活用した収益化手法には、下記4つがあります。

  • 販売
  • 月額制のファンコミュニティ(サブスクリプション)
  • 作品のライセンス料
  • 広告収入 など

たとえば、「pixiv」では自作のイラストを販売したり、月額制のファンコミュニティ「pixivFANBOX」を通じてファンからの支援を受けたりできます。

「BOOTH」でも、マンガ、小説、グッズ、音声や動画コンテンツなどクリエイターのファンに向けた幅広い商品を販売することができます。写真に関しては、「Adobe Stock」などのストックフォトサービスを通じて、作品をライセンス販売する方法もあります。

クラウドファンディング

クラウドファンディングは、プロジェクトの実現に向けて一般から資金を募る仕組みで、支援者から集めた資金を活用して商品やサービスの開発・提供を行います。

たとえば、クラウドファンディングプラットフォームの「CAMPFIRE」は掲載料金が無料で、テキストと画像を組み合わせた直感的な操作で簡単にページを作成できます。


クリエイターエコノミーの活用事例4選

企業がクリエイターエコノミーをどのようにビジネスへ活用しているのかがわかる事例を4つ紹介します。


【Daniel Wellington】ブランドアンバサダープログラム

Daniel Wellingtonの「ICONS」アンバサダープログラムは、ミニマリスト美学を広めるためのグローバルコミュニティです。

プログラムに参加することで、コミッション、ギフト券、キャッシュ、パーソナルコード、提供品、スペシャルプロモーションなどの特典を得られます。参加条件にはフォロワー数の制限がなく、多様なSNSプラットフォームのクリエイターが応募できます。

このようなアンバサダープログラムを実施すれば、ブランド認知の拡大が可能です。また、インフルエンサーを活用することで、信頼性も向上できます。

参考:Daniel Wellington「ブランドアンバサダープログラム募集中」

【ローソン】料理研究家リュウジとコラボ

ローソンは、料理研究家リュウジとのコラボレーション第6弾として、「トロぶた角煮」を使用した「角煮めし」レシピを紹介しました。ローソンの商品と家庭の調味料を組み合わせることで、簡単で美味しいアレンジ料理を手軽に作れることを伝えています。

リュウジは総フォロワー数が640万人を超える料理研究家で、YouTubeやX(旧Twitter)で「簡単・爆速レシピ」を発信しています。

このコラボレーションのメリットは、購買促進とSNSでの話題拡散によるブランド認知の拡大です。

参考:ローソン「料理研究家リュウジさんコラボ!トロトロの豚角煮を炊き込みご飯に!」

【KANGOL】YouTubeの人気クリエイターとコラボ

「KANGOL」は1938年に創立されたアパレルブランドで、特にハットの分野で人気を集めています。新ブランド「KANGOL REWARD」は、ワンマイルウェアを提案するコンセプトライフスタイルブランドです。

KANGOL REWARD 公式 YouTubeチャンネルでは、有名人やインフルエンサーとのコラボレーションにより、商品の魅力をPRしています。本事例におけるコラボレーションのメリットは、インフルエンサーとのコラボレーションによるフォロワーへのリーチや認知拡大、好感度向上などです。

参考:KANGOL「KANGOL REWARD 公式 YouTubeチャンネル」

【デュエマ】カードデザインで豪華クリエイターとコラボ

デュエマ(デュエル・マスターズ)の有名カードが豪華クリエイターによる特別イラストのコラボカードとして拡張パックに収録されました。

このコラボにより、下記の効果が期待できます。

  • クリエイターのファン層の取り込み
  • 独自性が高いイラストに魅力を感じた既存ユーザーのエンゲージメントの向上

話題性が高いクリエイターが担当することで、高い効果が期待できます。

参考:株式会社タカラトミー「有名カードと豪華クリエイターの夢のコラボカード!」


個人クリエイターとのコラボで効果的なマーケティングを

個人クリエイターとのコラボレーションは、企業にとって効果的なマーケティング手法です。クリエイターが持つ独自の視点やファンとの深い繋がりを活用することで、商品やサービスの認知度を大きく向上させることができます。

本記事で解説したクリエイターエコノミーの収益化手法や事例を参考に、マーケティング戦略に取り入れましょう。


▶監修:足尾暖氏

【プロフィール】
株式会社ZERO Animation 代表取締役
プロデューサー

ゲームプロダクション、大手デジタル広告代理店での経験を経て2023年、株式会社ZERO Animationを起業。
アニメーションを軸にしたコンテンツ制作に加え、ライブ、展示会など幅広いイベントを手掛け、企画、集客、制作、運営、分析を担当している。


コンテンツ東京とは
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